別れ際に君はボクに手渡した。
ミュージカルのチケット2枚。
本当は君はボクと二人でいっしょに見に行くために買っておいたらしい。
そんなチケットを君はボクに手渡しながら、
「はい誕生日プレゼント。新しい彼女と見に行ってね。今までありがとう。さよなら。」
ボクはただそれを受け取り、去っていく君の背中を見送ることしかできなかった。
愛に正直になることは愛のつらさも知ることなのか。
君のつらさを思い、我慢できなくなって君の後を追いたくなる衝動。
でもそれは正解ではない。
いや、正解なんてどこにもない。
愛という過ちを受け入れながら人は生きるんだと自分に言い聞かせるが、その思いに自信はない。
あれからどのくらい時間が流れただろう。
君はもう、ボクがいないという幸せに慣れただろうか。
いつかボクがこの世界からいなくなる瞬間に君のことを思い出したとしたらボクの負けだ。
でも、君は決してボクのことを思い出さないでほしい。
思い出すつらさはボクだけで十分なのだから。