ここに来るまでにこんなにも時間がかかった。
出会った頃はボクも若かったし君も若かった。
君を喜ばせようとボクが走り回り、
君はボクのために寝る間も惜しんでくれた。
気づけば歳をとった。
それでもそんなことは気にならなかった。
気にならないほどボクたちは充実していたし、
喜びに満ちた日々だった。
今、目の前には何もない。
あるのは記憶の中の君の笑顔だけ。
そっとしておこう。
そっとしておきたい。
繰り返し自分に言い聞かせる。
それでも忘れ得ぬ記憶。
長い時間をかけて積み上げたものを崩すのに時間はかからなかった。
誰も悪くない。
誰も悪くない。
誰かが悪ければ、その誰かを責めれば解決する。
でも、誰も悪くない。
目の前に果てしなく続く道を気にしながら後ろを振り返ると、
今まで歩んできた果てしない道が見える。
これからの道がこれまでの道の長さを越えるには、
うんざりするほど時間がかかるだろう。
いや、もしかしたら二度と超えることは無いのかもしれない。
目の前のはるか遠くにかすかな光が見える。
あれは希望の光だろうか。
今はただ、その光を信じ、新しい一歩を踏み出すだけだ。
通り道は違っていても、見ている光は君も同じかもしれない。
そう思うとき、ボクの体はもうボクの体ではなくなるのだ。